私自身、単純なドリル穴をあけるには、昔から使われている黒いツイストドリルを使用している。多数の同一の穴がある場合や、大量数のワークをこなす必要がある時は、OSGのEXゴールドドリルやNACHIのAG-ESSドリルを好んで使っている。超硬ドリルを使用するまでには至っていない。多分、超高速、高送りで飛躍的に加工時間が短縮できると思うのだが、少量生産が多い場合は効果があるとはあまり思えない。
磨耗したときのことを考えて、やはり一番多用しているのは、ツイストドリルである。
ドリルを回転させて、被削材に押し付けてやれば穴は簡単にあくのだが、切削条件を間違っていると、加工時間が余計に掛かったり、再研磨までの時間が短くなったりする。
ボール盤やラジアルボール盤で加工する時は、前面か側面に書いてあるはずの回転数を設定し、ハンドルを下に適当に押し付ければいいが、NC工作機を使用する場合、少なくとも、回転数と送りの知識は必須である。
ただ、この黒いツイストドリルの切削条件を目にすることはあまりなく、初心者にとってはどう設定していけばいいのか、不安が一杯である。
長年金属加工業に携わっていると、ボール盤程度なら経験だけで判断でき、加工していて音や切り粉の色などで回転を上げたり、下げたりして調整していく。最初は恐々と穴あけをしていくのだが、慣れてくると自然と回転をあげて、ハンドルを強めに下に押さえていくようになる。
NCボール盤、マシニングセンターになってくると、回転数と送りを決定してやる必要がある。制御盤の方で自動決定システムがついていることもあるが、自分で決めなくてはいけないことも多々ある。
回転数を考える上で、どうしても切削速度[m/min]という概念を導入した方が後々のために、データ整理しやすい。
ツイストドリルは二枚刃であるが、一刃当たりの送りという考えは私自身はあまりしていない。
経験的な数値であるが、被削材SS、S45Cなら、一回転当たりの送りはドリル径の1%~最大2%程度みておけばいいだろう。後は実践で自分なりの最適値を会得していけばいい。
13mmを越えるドリルの場合は下穴をあける場合もあるが、その場合は2%以上でも可能である。
私の場合は、5mm未満のドリルの送りは2%を取り、5~13mmは0.1mm/rev、13mm超えは適度に下穴をあけて0.2mm/revの送りを設定することが多い。そして、多数の穴をあけるときは様子を見ながら、時間短縮のために条件を上げていく。
どうしても穴あけがしにくい場合は、鉄の場合の切削速度の半分の回転数で、1回転当たりの送りを二倍にしてみましょう。要は、切削速度を下げて、送りを早めて試してみるということです。
概念的には、ステンレスは加工硬化が起き易いので、切削速度を下げて加工硬化を生じにくくして、硬化が起きる直前に送りを早めて取り除いてみるという感じでしょうか。
切削速度はSS、S45Cなどと同等かそれ以下2/3程度を見ています。
送りを少なめに設定すると、ドリル先端の加工材料の方に焼きが入るので、ドリルの磨耗が極度に進みます。切り粉やドリル先端が黒くなっている時は、切削速度を下げる必要があります。
回転数の計算は こちら から
この記事は3771日前に書きました