匠技の居所

加工に於ける一般公差の考え方・対処の仕方

三つの考え方

設計者は機械や装置の仕様に合わせて、又、組み立て時に干渉や不具合が生じないように図面を書いていきます。精度が必要な箇所は0.01台の公差が入ります。そして、特段気にせずにいい所は単に数字だけの寸法が記入されますが、大きく外れないように、一般公差という枠がはめられています。経験上、一般公差から外れても官庁向けや航空機、宇宙関係、発電所等先端技術向け以外なら、客先の担当者了承のもと、特別採用されることが多いです。

公差指示の無い寸法でも、単に削るのではなく、意識的に安全な寸法で削る癖を付けることが作業者として大事である。一般公差は大きいからある程度適当に削っても大丈夫と考えずに、自分にとってその部品を納品した時に、不良品として帰ってくるリスクを出来る限り減らす考えが必要なのです。

  1. 公差の中間を取る
  2. 公差内で修正代を若干残しておく
  3. 形状部位により対処する


1.公差の中間を取る

とりあえずは一番無難な選択である。
   公差寸法逸脱の危険が少なく、普通は、皆、これを採用することが多いと思います。

2.公差内で修正代を若干残しておく。

外形面間距離、外径寸法100なら、100.15とか、100.1にしておく。理由は、仮に、打痕すり傷が発生した場合に、最後に一面軽く、加工することにより、瑕疵を除去できるからです。

運よく不具合なく加工できたなら、そのまま納品。気になる傷が生じたら、表面を必要に応じ0.01から0.2削って納品です。

勿論、デメリットもあり、穴明等の基準面の取り方に注意が必要です。瑕疵のある面を削って基準からの穴位置がずれてはいけません。

3.形状部位により対処を変える

特に、旋盤物の外径は、若干、小さめにする方がいい事が多いのです。φ100なら、φ99.9にしておく。内径は大き目に加工しておくとかです。内径φ80なら、φ80.1にする。どうして、こういう事をするのかというと、組み立て時に、干渉するリスクが減るのです。

設計者の方も十分検討して、一般公差で干渉しないと判断されているでしょうけど、まれに、隣り合った部品と接触することがあるので、私自身は意識的に公差の中間からずらせて加工しています。特に最近は、省スペース、小型化の機械、装置が多いので、予期せぬ干渉が多々あります。

備考

2.と3.の考えは、相反する考えに見えますが、ケースバイケースで対応していくものです。

まずは、中間狙いで考えておいて、傷に対して煩い客先への部品は後の修正を考えておき、クレームの少ない客先へは、中間もしくは、形状を鑑みて若干ずらして加工することが多いです。

重要なのは、自分が納めた部品が検収済でも現場サイドから「ここをもうちょっと削ってくれ」という依頼を出来るだけ少なくする工夫、考えを持つ方がいいのです。本末転倒なのは、意識過剰になり、見積作業時間を大きく上回ってしまっては駄目なのです。あくまで一般公差は大まかな寸法なのですから。

2008年12月29日(約15年前) written by 匠技